2016年5月にEC(欧州委員会)が発表した『EU(欧州連合)のジェンダー平等と反差別法における交差的差別』は、欧州のジェンダー平等と反差別に関心をもつ法律専門家たちのために、サンドラ・フレッドマン(Sandra Fredman)が作成した報告書です。サンドラ・フレッドマンは、オックスフォード大学法学部の教授であり、反差別法、人権法、労働法、女性と法などについて研究しています。この報告書は、近年注目されている交差的差別をテーマとしており、その中でも特にジェンダーに焦点を当てています。
今回、報告書の第3章にあたる、「文脈における交差性 (3)交差的差別の要素としての年齢」を抜粋し、翻訳しています。[訳注1]
紹介した事例については、当該ウェブサイトを参照し、内容を補足しています。
交差的差別の要素としての年齢
年齢については、交差的差別に関する社会調査がすでに行われており、特に年齢とジェンダーの交差性に関しては調査が進んでいる。このデータを用いて、ジェンダー差別が年齢によってどのように影響を受けているかを追跡すること、特にジェンダー差別がライフサイクルに及ぼす影響を追うことが可能となる。近年の調査結果が示すところによると、EU全体で、65歳以上の女性は、同年代の男性よりも貧困に陥り、社会的に排除される危険性が非常に高い。しかしながら、65歳未満では、貧困に関するジェンダー間格差は小さくなっている。その主な理由は年金格差である。欧州委員会の男女平等に関する2015年報告書によると、「EUでの年金におけるジェンダー間格差は、2014年には40%であり、格差が縮まる兆候はない」。このことは、高齢の女性を不利な状況に陥らせているのは年齢とジェンダーの相乗的な組み合わせであると示唆している。欧州委員会の2015年報告書が示しているように、「女性の収入の少なさ、雇用率の低さ、パートタイム労働に従事している割合の高さ、子育てや介護のための休職、といった要因によって年金保険料が減少し、結局は年金給付額も減少することとなる」。EU統計局(Eurostat)による最近の統計(2016年3月)が示すところによると、2014年には、女性の大まかな時給は平均して、EU(28ヵ国)の男性より16.1%、ユーロ圏(18ヵ国)の男性より16.5%低かった。さらに、世界中においてもヨーロッパにおいても、無償労働は女性が行うものであるとする社会的規範が原因で、女性は未だに男性と比較して不均衡に多くの無償労働に従事しているという詳細な証拠がある。OECD(経済協力開発機構)やILO(国際労働機関)、マッキンゼーグローバル研究所、欧州議会による報告書もまた、無償の育児・介護労働におけるジェンダー不平等が、ジェンダー間の収入格差につながっていると説明している。
上記の証拠が示すところによると、今なお続くジェンダーに関するステレオタイプが原因で、多くの女性が低賃金、短時間で働き、仕事を中断しなければならない経験もしている。このことにより、多くの女性が老後のために支払う年金保険料の金額に影響が生じている。このことは、複数の制度において、女性の年金受給開始の法定年齢が男性よりも低いままであり、その結果、年金保険料を支払う期間が短くなっているという事実によってさらに悪化している。結果として、全EU加盟国において、女性の年金受給額の平均は男性よりも低くなっている。遺族給付によって年金受給額の少なさが改善される女性もいるが、2012年EU全体に関して、女性の年金受給額の平均は男性のたった60%にすぎなかった。65歳以上の女性の多くが、同年代の男性と比較して一人暮らしをする傾向にあるため、彼女らは家計を他者と共に分担することができない。
年齢はまた、民族的出身、性的指向、障害と関連して交差性が問題となる分野である。欧州基本権機関が2012年に発表した報告書におけるデータによると、民族的マイノリティまたは移民の回答者の4人に1人が少なくとも2つの事由によって差別されていると感じていると述べた。特に、民族的マイノリティや移民である若い男性は、民族的マイノリティや移民としての地位に基づいてかなりの差別的取り扱いを受けたと報告した。このような差別的取り扱いは、ヘルスケアとの関連においてもみられる。2013年に欧州基本権機関が実施した研究によって、文化、性、年齢、民族、移民というバックグラウンド、宗教、またはこれらの組み合わせに基づくステレオタイプがどのようにしてヘルスケアにおける不平等な取り扱いにつながるのかが明らかになった。特に、加盟国中で複数のステレオタイプが何度もみられることが判明した。中でも、これらのステレオタイプは、移民コミュニティに属する人々が、特に高齢であるかもしくは障害のある場合に、病気のふりをしているのではとみなされることに関連している。欧州基本権機関の研究が示すところによると、成人になってから移住先の主要言語を学んだ高齢の移民は、認知症が原因でそれを忘れることもある。高齢の移民や障害のある移民は、完全な在留資格をもたないために、社会保障制度に組み込まれない。
当初、EU司法裁判所(CJEU)に持ち込まれた性差別の事例はジェンダーと年齢の交差性を反映していたけれども、年齢に基づく差別に関する近年の多数の事例が主に高齢の白人男性に関係したものであることは注目に値する。対照的に、実質的平等に基づく交差的アプローチは、より深い不平等を明らかにしている。1つ目の側面である再分配の点からみると、民族的マイノリティかつ高齢である人々と同様に、高齢女性は貧困に陥る傾向にあるという事実に注意が払われるべきである。2つ目の側面であるスティグマと偏見は、民族的マイノリティである若い男性にスポットライトをあてた。彼らは特にイスラモフォビア(イスラム嫌悪)の文脈でステレオタイプと偏見の被害者となっている。3つ目の側面として、参加の機会がなく、自分の関心事を表明する権利を享受できていないことは、主要言語を話すことが出来ないマイノリティの高齢者にとって特に問題である。4つ目の側面は、構造的障壁を考慮するもので、賃金労働人口における深い構造的問題を明らかにしている。この構造的問題とは、出産と子育てにおける女性の役割分担が、女性の長期的な経済状況、その結果として高齢期の状況に影響を及ぼすことを意味する。同様に、この側面は、その国での主要な文化的背景や言語を学んでいない高齢者の受入れ体制が整っていないことに焦点を当てている。
【欧州司法裁判所における判例】
①1986年Marshall対Southampton Area Health Authority事件判決(イギリス)[訳注2]
概要:ヘレン・マーシャル(Helen Marshall)はイギリス政府によって設立された機関のArea Health Authority(AHA)に雇用されていた上級栄養士である。AHAの方針は、女性は60歳、男性は65歳で退職するというものであったが、AHAは、マーシャルが60歳になった後、2年間雇用期間を延長した。
しかし、マーシャルは65歳まで勤務を続けたいという意思を表明したにもかかわらず、「退職年齢」を過ぎていたことを理由に解雇された。彼女は、この解雇は性差別法とEU法に反した差別的取り扱いであると主張し、労働審判所に訴訟を提起した。審判所は、性差別法第6節(4)は、退職に関し、性別に基づく差別を許容しているため、マーシャルの訴えをこれまで退けてきた。しかしながら、「就職、昇進や労働条件に関する男女平等実現のための指令76/207」に定められた平等な取り扱いの原則に基づいた主張は支持された。
結果:指令76/207の第5条1項は、解雇条件を含む労働条件に関して、性別に基づくいかなる差別も禁止しているが、国内法令のもと、男女間で異なる年金受給年齢に達したという理由のみによる女性の解雇に関する一般的方針は、指令76/207に反しており、性差別であると解釈されなければならない。
②2011年Association belge des Consommateurs Test-Achats ASBL and others対Conseil des ministers事件判決(ベルギー)[訳注3]
概要:「物品及びサービスへのアクセスとその供給における男女均等待遇原則を実施する2004年12月13日の理事会指令2004/113/EC」第5条1項は、各加盟国に対し、2007 年12月21日以後に締結するすべての契約においては、保険その他関連金融事業における保険料及び保険給付金を算定する要素に性別を用いることによって個々の保険料等に差を生じさせてはならないとしている。しかし、同条2項には次の免除規定が置かれた。「第1項の規定にかかわらず、各加盟国は、2007年12月21日より前に、性別が決定的に影響を与える要素であることが統計より明らかである場合には、男女の保険料及び保険給付金に差を設けることを認可することができる。…」
この免除規定は、保険に関する期限のない不平等の措置を認めるものであって、多くの加盟国はこの免除規定を国内で適用してきていた。
ベルギーの消費者協会であるテスト・アシャ(Test-Achats)は、この免除規定は男女均等原則に反するとして、この指令を国内法として規定する法律を無効とするようベルギー憲法裁判所に提訴していたが、裁判所は審理の結果、これはEU 法解釈の問題であるとして、この審理手続を留保して欧州司法裁判所に先決裁定[訳注4]を求めた。
結果:欧州司法裁判所は、指令 2004/113/EC 第5 条2 項は、EU 条約第6 条2 項が保障する平等及び非差別の原則と両立しないため、無効とするという判決を下した。
③2010年Brachner事件判決(オーストリア)[訳注5]
概要:オーストリアでは、2008年の一年間、一か月あたりの年金受給額が例外的に746.99ユーロを超えた。その超過分の調整のため、年金や遺族年金の受給額が最低限の生活水準を保障する額に満たない者は、追加補償を受給できることになった。その受給のための基準額に満たない女性受給者は57%、男性は25%であった。
Brachnerは1947年6月8日に生まれたが、一般社会保障法のもとで高齢者年金を受領し、2007年には、毎月計368.16ユーロ受領していた。しかし、彼女の配偶者が毎月1340.33ユーロの年金を受領しており、それが彼女自身の収入に加えられると、追加補償受領のための基準額を超えてしまうため、彼女は追加補償を受領することができなかった。
Brachnerは、2008年の年金額調整は均等待遇の原則と合致せず、憲法上の財産権の保障に違反し、「社会保障における男女均等待遇指令79/7/EEC」に反して女性に対する間接差別という結果を招いていると主張し、地方裁判所に訴えを提起した。
結果:欧州司法裁判所は、オーストリアの年金額調整は、EU指令79/7の第4条1項で規定されている間接差別の禁止に明らかに違反していると結論付けた。この結論において重要なことは、女性の年金受給者には、男性受給者とは異なる影響が及んでいることに裁判所が注目したということである。男性と比較して、非常に多数の女性に不利益が及んでいるのか否かという疑問に答えるために、裁判所は、不利益に苦しむ退職者は男性よりも女性の方が多いかどうかについて調査した。つまり、裁判所は高齢女性という交差性を有する集団を調査対象としたが、高齢女性と高齢男性の間の不平等が指令79/7における男性・女性間の均等待遇原則の違反となると結論付けるのは容易であった。
④2008年Maruko対Versorgungsanstalt der deutschen Bühnen事件判決(ドイツ)[訳注6]
概要:当該事件は、「雇用及び職業における均等待遇の一般的枠組みを設定する指令2000/78/EC」の解釈について、欧州司法裁判所に照会したものである。国内法のもとでは、結婚は異性間に制限されているので、結婚していない個人間の同性パートナーシップ[訳注7]の遺族に対する年金給付の拒否は、結果として性的指向に基づく差別になるか否かということが問題であった。
結果:欧州司法裁判所は、以下のように述べた。EU基本権憲章第21条(差別の禁止)・第23条(男女の平等)について、国内裁判所が、遺族となった配偶者やライフパートナーが遺族給付に関する範囲で類似の状況におかれると判断する場合、結婚を異性間に限定する国内法規定は、結果として指令2000/78の第1条と第2条第2項(a)[訳注8]の範囲で、性的指向に基づく直接差別を構成するとみなされる。(パラグラフ72)
欧州司法裁判所は、「国内法のもとでのライフパートナーシップ登録により、遺族給付に関して異性婚の配偶者に相当する状況にあっても、遺されたパートナーが、遺された配偶者が受給するのと同等の遺族給付を受給しない、という法令を、指令2000/78の第1条と第2条の規定は排除している。遺族となったライフパートナーが、遺族給付年金を受給する権利を与えられた異性婚の配偶者と同様の状況にあるか否かを決定するのは国内裁判所である。」と述べた。(パラグラフ73)
⑤2013年Römer対Freie und Hansestadt Hamburg事件判決(ドイツ)[訳注9]
概要:Jürgen Römerは1950年から1990年5月31日に労働資格を失うまで、管理従業員としてFreie und Hansestadt Hamburgに勤務していた。1969年から、彼は連れ合いであるUと暮らしていた。彼は2001年2月16日に成立した登録ライフパートナーシップ制度に関する法律に基づいて、Uとパートナーとして登録した。Römerは、結婚している年金受給者に適用可能な税の優遇制度の対象者に自身が該当するとし、補助的退職年金の額を再計算するよう度々要請していた。2001年12月10日にハンブルグ市は、結婚している年金受給者または児童手当やそれと同等の給付の受給資格のある年金受給者が税における優遇制度の利益を享受するとして、Römerに対するそのような制度の適用を拒否した。
Römerは、自身は結婚している年金受給者として扱われるべきで、そのような権利は雇用と職業における均等待遇の一般的枠組みを確立した指令2000/78/ECから生じるものだとし、ハンブルグ労働裁判所に訴訟を提起した。
結果:欧州司法裁判所はまず初めに、補助的退職年金は指令2000/78の範囲内にあると述べた。裁判所によると、ライフパートナーシップの枠組みと婚姻の枠組みが徐々に調和しているのに伴い、ドイツの法制度においてはいかなる重要な法的違いももはや見受けられない。残る主な違いは、婚姻は配偶者が異なるジェンダーを有していることを前提としており、ライフパートナーシップは、パートナーが同じジェンダーを有していることを前提としている点である。
本事例において、補助退職年金は受給者、そして間接的に受給者の同居者に利益を与える、収入の代替物の提供を目的としているため、補助的退職年金の受給権が、受給者が結婚していることのみならず、配偶者と別居していないことまでも前提条件としている。この点に関して裁判所は、ライフパートナーシップ法は、ライフパートナーが配偶者同士のようにお互いに支援やケアを行い、労働や財産によってパートナーシップの共通のニーズに十分に貢献する義務を負うことを規定していると強調している。それゆえ、裁判所によると、登録されたライフパートナーと、婚姻した配偶者はどちらも同一の義務を負っている。したがって、両者の状況は同等である。
次に、裁判所は性的指向に基づく不利益待遇の基準に関して述べた。Römer が同性とのライフパートナーシップを結ぶのではなく異性と婚姻をしていれば、彼の年金受給額が高くなっていただろうことは明白である。加えて、裁判所は、Römerは結婚している同僚と同額の保険料を支払うことを要求されていたため、保険料の金額は、彼が婚姻しているか否かによる影響を全く受けていなかったと述べた。
【まとめ】
しかしながら、差別事由としての年齢に関する判例は、交差性に関して同じような理解を示してはいない。特に、法定退職年齢が年齢差別の禁止に対する例外としてどの程度まで許容されるのかに関してなど、年齢に関する複雑な交差的問題が多々ある。法定退職年齢は、年金が十分な額に達していない女性やマイノリティに悪影響を及ぼし得る。他方で、高齢の白人男性労働者の退職によって、以前は不利な状況にあった女性や他のマイノリティの労働の機会が生み出されることもあるかもしれない。近年の年齢差別のいくつかの事例は、法定退職年齢は労働人口を刷新するために必要であると認めていた。それにもかかわらず、欧州司法裁判所は、競合する複数の利益のバランスを慎重に図らなければならないため、その判例の多数は、年齢差別のより深刻な不利益及びスティグマについて触れていない。年齢差別の事例で、民族的マイノリティの高齢者や若者、LGBTの高齢者や障害のある高齢者が被っている特定の不利益を反映しているものは何もないのだ。最も貧しい高齢者や若者、主に女性、民族的マイノリティや障害のある人々は、EU法による救済を利用していない。これは、交差的差別の経験の多くがヘルスケアや他のサービスに関するものであるのに、EUの差別禁止法は雇用に焦点をあてているためである。それゆえ、退職年齢が近づくまで労働人口として留まり、自らの地位を守っている人々にとって有利な傾向が内在している。年齢差別の事例の多くはこれらの問題と労働市場の間の相互作用が原因で発生しており、労働市場における差別の解決手段のみでは、差別ゆえに労働市場への参加が害されている人々や、そもそも労働市場に参加できない人々に救済を提供することは出来ないだろう。
(翻訳・構成:稻田亜梨沙・ヒューライツ大阪インターン)
<出典>
Sandra Fredman(2016), “Intersectional discrimination in EU gender equality and non-discrimination law”
http://www.equineteurope.org/Intersectional-discrimination-in-EU-gender-equality-and-non-discrimination-law
[訳注]
1. サンドラ・フレッドマン(Sandra Fredman)、「EUのジェンダー平等と反差別法における交差的差別」(2016年)、
第3章 文脈における交差性 (3)交差的差別の要素としての年齢 より抜粋。
なお、第3章の構成は以下の通りである。
(1)不利な状況にある民族的マイノリティにおけるジェンダー
(2)ロマ、シンティ、移動者集団における交差性
(3)交差的差別の要素としての年齢
(4)家事労働者
(5)性的指向と性的自認
(6)障害
2. EUR-Lex(EU法データベース)
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:61991CJ0271 参照
3. 海外立法情報調査室・植月 献二「【EU】 保険の男女差別免除規定は無効―司法裁判所判決」、『外国の立法』(No.247-1)(2011年4月)
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02470103.pdf 参照
4. 先決裁定とは、EU加盟国の国内裁判所がEU法の適用や有効性に疑義を抱く場合、自ら判断するのではなく、欧州司法裁判所に判断を求める手続を意味する。
5. CURIAウェブサイトより
Case C123/10 Brachner [2011] ECR l10003
http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf;jsessionid=9ea7d0f130d5f5c88a2d29314499976ebbdc0323113a.e34KaxiLc3eQc40LaxqMbN4PaNuQe0?text=&docid=111583&pageIndex=0&doclang=EN&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=724531
6. European Union Agency for Fundamental Rightsウェブサイトより
Tadao Maruko v Versorgungsanstalt der deutschen Bühnen (Case C-267/06)[2008] 2 C.M.L.R.32 (CJEU)
http://fra.europa.eu/en/caselaw-reference/cjeu-c-26706-judgment 参照
7. 同性ライフパートナーシップについて
日本では、民法上の婚姻が成立しない同性カップルは、就労、住宅、医療、相続、税金、在留資格などの面で、法律婚の夫婦と同等の法的保護が受けられていない。他方で近年、諸外国の一部には同性間の婚姻や、婚姻に準じた法的地位を認めるパートナーシップ制度を制定するところがあり、関心が寄せられている。
ドイツでは、2001 年に「生活パートナーシップ法」が成立し、官庁に登録した同性カップルについて婚姻に準じた保護が認められるようになった。
生活パートナーシップの成立は民法典の婚姻の締結や婚姻障害の規定に対応し、ほぼ同様なものとなっているが、成人の同性間の2 人に限られる。相互に扶養義務を負い、異性婚の配偶者と同様の法定相続分と被相続人の住居賃借契約の承継を得られるが、相続税については婚姻と同様の優遇措置が適用されない。カップルがパートナーシップ継続中に支払った年金保険料は、婚姻における離婚と同様に、パートナーシップ解消後に年金調整によって分割される。
生活パートナーシップの解消は、当事者の一方の死亡又は裁判による廃止によって行われる。
鳥澤孝之、「諸外国の同性パートナーシップ制度」『レファレンス 60(4)』(国立国会図書館調査及び立法考査局)(2010年)、29-46頁
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/071102.pdf 参照
8. 雇用及び職業における均等待遇の一般的枠組みに関する指令2000/78/EC
第1条(目的)
本指令の目的は、加盟国内で均等待遇原則を実施することを目指して、雇用や職業に関し、宗教もしくは信条、障害、年齢または性的指向といった事由に基づく差別と闘うための一般的枠組みを定めることである。
第2条(差別の概念)
第1項 本指令の目的達成のため、「均等待遇原則」は、第1条で規定された事由に基づく直接または間接差別があってはならないことを意味しなければならない。
第2項 第1項の目的達成のため、
(a)直接差別は、ある個人が、第1条で規定された事由に基づいて、自身と類似の状況にある他者よりも不利に扱われている場合に生ずる。
(b)間接差別は、下記(i)(ii)の場合を除き、明らかに中立的な規定、基準または実行が、特定の宗教もしくは信条、特定の障害、特定の年齢、または特定の性的指向を有している人々を他者と比較して特に不利な状況におく場合に生ずる。
(i)規定、基準または実行が、正当な目的によって、またはその目的が適切で必要であると示すことにより、客観的に正当化される。
(ii)特定の障害を有する個人に関し、本指令を適用する雇用者、個人や組織が、そのような規定、基準または実行に必然的に伴う不利益を根絶するために、第5条に含まれる原則に従って、国内法のもとで適切な手段を講ずることを義務付けられる。
(※下線部分が本文での該当箇所です。)
指令の原文はEUR-Lexウェブサイトより
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:32000L0078:en:HTML 参照
9. EU Lawsウェブサイトより
Court of Justice of the European Union, “Judgment in Case C-147/08 Jürgen Römer v Freie und Hansestadt Hamburg”, PRESS RELEASE No 44/11 Luxembourg, 10 May 2011
http://www.eulaws.eu/?p=342 参照
(2018年03月14日 掲載)